三響會オフィシャルウェブサイト
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「鼓に生きる」―― Report

カメラマン・大屋孝雄さん

2016年9月、月刊「なごみ」連載の「鼓に生きる」初回の取材が始まりました。稽古場で鼓を構える田中佐太郎の姿を切り取ったのは、カメラマンの大屋孝雄さん。この時大屋さんが撮影した一枚が、書籍化された「鼓に生きる」の表紙を飾りました。
一年にわたる取材の中で様々なシーンや、思い出の道具を撮影していただいた大屋さんにお話を伺いました。

道を究めた人の、品格を表現したい

 
カメラマン・大屋孝雄さん カメラマン・大屋孝雄さん

お会いする前に、厳しい方だと伺っていましたので、とても緊張したのを覚えています。いざ対面させていただくと、品格のある、とてもカッコいい方でした。
普段、取材対象は柔らかい表情で撮らせていただくことが多いのですが、演奏時の写真ですし、笑顔は必要ない。ただ、佐太郎先生の持つ、道を究めた人の品格を表現したいと思い、ライティングはちょっとやわらかめに、厳しさがありながらも、固くはならないように…と思いながらシャッターを切りました。撮影時はとても気さくな一面もあって、懐の深さも感じました。

仕事柄、美術品などに触れる機会も多いですが、撮影させていただいた天人の胴は印象に残っていますね。蒔絵としても素晴らしいものだともちろん思いましたし、天人という楽人でもある清浄な存在が鼓にあしらわれていて、それを受け継がれているというのは佐太郎先生にぴったりですよね。
また、初舞台のためにお父様が誂えてくださったという鉄線の着物は、書籍化の際に追加で撮影をさせていただきました。とても丁寧で良い仕事が施されているお着物で、天人の胴もそうですが、その繊細な技を伝えられていたら嬉しいなと思います。

連載中には傳左衛門さんのお子さんの忠昭くんの演奏を、書籍化の追加撮影で佐太郎先生と忠昭くん、傳次郎さんのお子さんの太一くんのお稽古風景も撮影させていただきました。二人とも小学生ですね。まだ小さくて、可愛らしい一面も見ることができましたが、演奏、お稽古となると顔が変わる。わたしも趣味で尺八をやっていまして、和楽器の難しさは少しわかるつもりでいます。こんなに小さい子がここまで演奏できるのかと驚きましたし、佐太郎先生とお子さんたちそれぞれが、真剣に対峙している様子が伝わってきて、気持ちの良い瞬間でした。今の日本が失いつつある、誇るべき日本文化の形がそこにあるようで、背筋の伸びる思いでした。


大屋孝雄(おおや・たかお)

1955年、東京都生まれ。写真家。
日本各地の美術工芸品(国宝から民具まで)を対象とした美しい写真で知られる。骨董品を愛好し、近年は韓国の美術工芸にも目を向けている。写真掲載図書は、『福島の磨崖仏、鎮魂の旅へ』『日本人形の美』(淡交社)、『民芸とMingei』(晶文社)、『東北の伝承切り紙 ―神を宿し神を招く』(平凡社)、『丸ごと韓国骨董ばなし』(バジリコ)など多数。