三響會オフィシャルウェブサイト
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「鼓に生きる」―― Report

file.02デザイナー・縄田智子さん

書籍化にあたって、デザインを担当された縄田智子さん(L'espace)。実はデザインを依頼した編集担当者さんも知らなかった、亀井家との意外なご縁をお持ちでした。
デザインを通して田中佐太郎に感じた印象や、本に隠されたこだわりについてお話を伺いました。

ふしぎなご縁

 

月刊「なごみ」で、編集の宮﨑さんとは昔からお仕事をご一緒していた経緯があり、今回、佐太郎さんの連載を本にまとめたいので、と、デザインのご依頼をいただきました。
実は、(佐太郎三男の)傳次郎さんのお友達のお母さまとわたしは以前からの知り合いで、三響會の公演にも誘われて何度か伺ったことがあり、ロビーで度々佐太郎さんのお姿をお見かけしていました。キリッとした佇まいの素敵な方だと思っていましたので、ご縁を感じました。

デザインのひみつ

 

表紙カバーのお写真は、佐太郎さんの凛とした風格の中に、鼓の紐の色がとても鮮やかに映えて美しく、華やかさもあります。お写真からも、お姿にご自身の意志や信念が表れているのがわかりますよね。
和風のテーマだと、渋くまとめることも一つの手ではありますけれど、佐太郎さんがお持ちのキリッとした意志の強さと、華やかさをどこかで出したいと思って、本を最初に開いた時に目に入る、見返しの紙の色と鼓の紐の色をつなげてみました。
裏表紙の小さい時のお写真もすごく可愛いですが、可愛いけれども、その時代から今まで全然ブレていない強さも伝わってきます。
また、これは編集からのリクエストではあったのですが、カバーを外すと、表紙に田中流の家紋、裏表紙に亀井家の家紋が配置されています。外に出ている部分ではないので、あしらいとして自由にデザインさせていただきました。それから、なかなかみなさん気がつかれないかと思うのですが、本の背の花布(はなぎれ)という部分には、縞になるような模様を入れました。

  • カバーを外した表紙
  • 花布
カバーを外した表紙 花布

わたしは、デザイナーは、自分が表に出るということではなくて、この本でしたら佐太郎さんがどういうふうに見えるかを考えて手助けする仕事だと思っています。内容を踏まえた上で、最低限読みやすいというところを押さえて、デザインが目立ちすぎることなく、書籍が伝えたいことがより伝わるようにさりげなくお手伝いできればなと。
実直に積み上げてきた経験から生まれる意志の強さや精神、自分を仲介として、お父様から受け継いだものを次の世代へ繋いでいくお姿を、デザインの面からも感じ取っていただければ嬉しく思います。


縄田智子(なわた・ともこ)

1953年、東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。80年、グラフィックデザイン事務所「L'espace(レスパース)」を若山嘉代子さんと立ち上げる。主な仕事は書籍、雑誌など出版物のデザイン。実用書であった料理本に、美しくグラフィカルなデザインを導入したことで知られる。