三響會オフィシャルウェブサイト
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「鼓に生きる」―― Report

file.03落語家・三遊亭金朝さん

前回に続き、田中佐太郎との不思議なご縁をお話しくださった落語家・三遊亭金朝師匠のインタビューをお届けします。
ご自身が落語家になられたきっかけや、本書の印象についてお伺いしました。

下町の文化に憧れて

 

親父が墨田区の押上出身なんです。子どもが産まれたから、じゃあ庭付きの一戸建てに住もうということになって千葉にうちを買ったんだけれど、親戚はみんな押上のあたりにいる。正月なんかに、八百屋だったばあちゃんの家に集まるたんびに、わたしが来るとみんなが一斉に「千葉が来た!」っていうんだよ。川向こうって馬鹿にされてるみたいで、なんだか悔しくてねえ。
親父は江戸っ子なもんだから、いまだに江戸弁振り回すし、わたしが小さい頃なんかは、会社で独身のあんちゃんがアキレス腱切ったなんつったら、俺が面倒見てやる!ってうちに連れて来て泊まらせて、なんてこともあったりして、そんな親父や下町の文化に憧れがあったんだよね。
勉強ができなかったし、落語の世界の雰囲気に憧れたのかな。出来損ないだけど、みんな笑いながら助け合って、誰からも褒められないけれど、それなりに頑張って一生懸命生きてる、みたいな。頑張って出世するとかじゃないからね、落語の登場人物は。
学校の授業はまるで聞けなかったけど、落語を聴くのは好きで。同級生たちにはお前は絶対サラリーマンになれないって言われてたし、他の仕事している自分っていうのは想像してなかったね。

せっかく噺家になったんだから

 

佐太郎先生の本を読んで、東京の人の暮らしとか文化というのが大事にされる時代が、これから来るのかもしれないなあって思いましたね。
落語も、新作落語とかが多くなってきてるけど、やっぱり八つぁん熊さんご隠居さんっていう世界がまた喜ばれるようになるんじゃないかなって。
例えば、本の中でも、勉強会の演目が、カラい曲ばっかりって叩かれたけど、別にいいんだ、チケットが売れても売れなくても関係ないっていう十一世のお話がありましたね。
そういう勉強会は必要なんだよね。わたしたちもそうで、面白い話、いわゆるウケ場の多い話っていうのは、やってる方も気持ちがいいからついそっちに行っちゃう。だけど、常にウケることばっかり考えるのは違うと思うんですよ。
せっかく噺家になったんだから、着物着てせっかく喋るんだから、八つぁん熊さんを聴かせて行くようなことをやりたいよねって思ってるんですよ。

お道具を持つときは…

 

この本、頭っから、もう、すごく厳しいでしょ。生まれ変わってもこのうちには生まれたくねえな…って思っちゃうような真剣さがあって。でも芸を仕込むっていうのはやっぱりそうなんだよな。
それが、最後のお孫さんに稽古つけてるところで、「お道具を持つときは重そうに持ちなさいよ、その方が楽器を大事に扱ってるように見えるから」っていう言葉、ウケちゃった。おばあちゃんとお孫さんのいい関係があるんだなって思って、ほのぼのとしたいい心持ちで読み終えることができましたね。

三遊亭金朝さん

三遊亭金朝(さんゆうてい・きんちょう)

1975年生まれ。1998年6月、三遊亭小金馬に入門。前座名「金兵衛」。2001年11月、二ツ目昇進。2013年9月、四代目三遊亭金朝を襲名し真打昇進。

三遊亭金朝オフィシャルブログ「馬鹿だなぁと思っていただけましたら。」
https://ameblo.jp/kincho0921/